Ortho4XPがVer1.30に更新され,先にWindowsPCで日本のフォトシーナリーを作る方法を説明しました。
その後,いろいろなフォトシーナリー作りに関するいくつかのスキルを習得し,日本のフォトシーナリーを美しく作るという目標のもとに記事を修正することにしました。
過去に説明した内容と違う説明をしているものもありますので,再度お読みいただければ幸いです。
Orth4XPの導入方法
Orth4XPはPython処理系のアプリですが,Windows用のコンパイル済みのバイナリー実行データが配布されています。
WindowsPCではこちらの方が速く動きますので,これを使います。
ダウンロードはX-Plane.orgのフォーラムから行います。

記事内の”Windows binary package for v130”リンクをクリックするとGoogleドライブのページが表示されます。
Ortho4XP.7zのGoogleDriveページから引用
右上のダウンロードボタンをクリックすればダウンロードページが開きます。
Ortho4XP.7zのGoogleDriveページから引用
ダウンロードされたファイルは”Ortho4XP.7z“というファイルで,これを7zを使って展開します。
7zはここから入手できます。
展開先がそのまま導入先フォルダーになります。
展開先フォルダーについての注意
Ortho4xpは,展開されたフォルダー内にある”Orthophots”フォルダーにダウンロードしたjpgファイルを保存します。
ZL17であればデータ1区域あたり約1~2GB,ZL18なら約1~6.4GBのフォトデータになるので,日本全体だとZL17で80GB弱,ZL18であれば250GB程度の容量が必要になります。
OSMデータと画像.jpgファイルさえ保管されていれば,ZLを変更しないかぎりフォトシーナリーを修正して作成する時間はかなり短縮できます。
“Ortho4xp”の実行ファイルの読み込みに時間はかからないので,画像ファイルなどのデータを保管するために低速であってもできるだけ空き容量の大きいドライブに導入しましょう。
展開先フォルダーを移動するときは,展開したフォルダー全体をコピーし,データがちゃんと移動できているかどうか確認してから元フォルダーを削除しましょう。
そうしないとダウンロードした貴重なデータを失うことになり,シーナリーを作成し直すときに最初から作成するのと同じ時間がかかります。
スタートメニューへの登録
展開した”Ortho4XP>Binary”フォルダーの中にある”Ortho4XP_v130.exe“を右クリックし,ショートカットをスタートメニューに登録します。
これでOrtho4XPのスタートが簡単にできるようになります。
Ortho4XPの使用
Ortho4XPの環境設定
フォトシーナリーを作成するとき,デフォルトのままでは利用できず,パラメータを設定しなくては実用的なシーナリーが作れません。
スタートから順を追って説明します。
Ortho4XPをスタートすると,最初にステータスウインドウが開きます。

スタートして最初に表示されるステータスウインドウ
ついでUIウインドウが開きます。

実際のスタートウインドウとなるUIウインドウ
使うフォルダーの指定やパラメータ設定はUIウインドウから行います。
UIウインドウの各パラメータ
フォトシーナリーを作る区域の指定
Latitude:緯度,Longitude:経度
これは,特定の区域を指定するものです。
区域は,飛行場シーナリーの中にある”Earth nav data“フォルダーの中にある”.dsf“ファイルの名前を参考にします。
SirJakeさんに作っていただいた広島西飛行場でしたら”\X-Plane 11\Custom Scenery\RJBH_Hiroshima_1992\Earth nav data\+30+130\+34+132.dsf“ですから,緯度34,経度132になります。
これを仮に”拠点タイル“と呼ぶことにします。
単一のシーナリーを作るのであれば,この拠点タイルとパラメーター設定だけで一つのタイルを作る事ができます。
Imagery:画像入手先
2021年までは,日本の雲のない写真を提供してくれるのはGoogleだけでしたが,MicrosoftがMSFSを発売して以降,Bingの画像の質が格段に向上しました。
特にタイルの色相は統一されているので,雲の白点を気にしなければ通常は”BI“を選択します。
なお雲の白点を目立たないように修正する方法は,あとから説明します。
私は最初ZL17の”GO2“で全国のタイルを作成しましたが,作成した後に飛行してタイルの色の検証をして変色をしている”GO2”タイルについて,“BI”タイルの変色が”GO2”より少なければ作り直しました。
そして新たにZL18のタイルを”BI”で作成しなおしましたが,小笠原諸島や南西諸島ではGoogleやUSA2を利用しなければならない場合もありました。
Zoomlevel:解像度
VFRで使うのであれば,ZLは17か18を選びます。
ヘリコプターで2,000ft程度の高度をよく使い,ディスクの容量に余裕があればZL18をおすすめします。
高高度のIFRであれば,公開されているZL13のタイルをまず利用し,ZL16で離着陸する飛行場のタイルを作成し飛行場周辺だけをZL19で作成するように設定します。
Base Folder:収納フォルダー
出来上がったフォトシーナリーを収納するフォルダーですので,容量にかなり余裕のあるドライブに新設します。
私は”XP_World_Photo_Scenery>Japan“というフォルダーを作りました。
ちなみに収納したフォルダーの大きさですが,ZL17で320GB程度でしたが,ZL18では1.2TBになりました。
“OrthoXP Config”の設定
UIウインドウの”ドライバーとレンチ“のアイコンをクリックして”OrthoXP Config“ウインドウを開きます。
このウインドウで作るフォトシーナリーの設定を行います。
各パラメータの灰色のボタンをクリックすると,説明ウインドウが開きます。
作成に大きな影響のないパラメータの説明は省略させていただきます。
日本国内向けのパラメーター設定
これから設定するパラメータは,X-Plane.orgフォーラムで公開された推奨設定値と,日本の事情にあわせた私の設定を加えたものです。
Vector data
apt_smoothing_pix : 8 -> 32 (Option)
高い場所の空港のぼかし具合を調整する値ですが,日本では標準のままでも問題はありません。
max_area : 200.0 -> 100.0(Option)
これは川やため池や船だまりに”Google2020″の文字が現れるのを防止するためには”200.0 -> 0.01“としますが,BIをソースに用いる場合は変更しなくても大丈夫です。
私は200.0 -> 100.0にして水面をできるだけ再現するようにしました。
Mesh
curvature_tol : 2.0 -> 1.5 (Option)
Meshのトライアングルの複雑さを指定するパラメータです。
細かい表現を求めるなら2.0のままにしておきます。
mesh_ZL:20
この値を高くしても,作成するタイルのZLが上限値になります。
つまりZL17で作成すればmesh_ZLは17に,ZL18で作成すればmesh_ZLは18に設定されます。
Masks
Mask_zl : 14 -> 15
水面の表示をきれいに表現するためにマスクの解像度を上げておきます。
mask_width : 100 -> 500
岸と水面のグラデーションの範囲(m)を指定します。
当初私は日本の海岸がコンクリート護岸が多いので捨て石の範囲を想定して10または2として作成しましたが,この設定では同じタイルの中にある海岸の砂浜が全く表現されません。
Ortho4XPは,護岸は護岸のように海浜は海浜のように適切にマスクを設定してくれるので,日本の海岸の場合は砂浜の離岸堤を表示するために500で作成しましょう。
また広島湾のようにカキ養殖筏があるような海域では,BIのデータを利用し
“mask_width :1000“で作成することをおすすめします。
BIデータであれば,南西諸島では3000から5000でも大丈夫です。
Masking_mode: sand デフォルトのままにします。
DSF/Imagery
high_zl_airport : False -> True 空港の周囲のZLを細かくする設定を有効化します。
TrueであればICAOコードのない飛行場がOSMデータにあればZL19に設定してくれます。
cover_extent : 1.0 -> 範囲をkm単位で任意に指定しますが,あまり広くすると作成速度が落ちます。
cover_zl : 18 -> 19 細かくするZLを指定します。
ratio_water : 0.25 -> 1.0
use_decal_on_terrain : False -> True(Option)
高い場所の色相を変えるオプションのようですが,日本の場合はデフォルトで大丈夫のようです。
custom_dem : 空白である事を確認すればOKです。
Application
overpass_server_choice : DE -> random
max_convert_slot : 4 -> 自分のPCのCPUの最大スレッド数から1または2を減じた数を設定します。
custom_scenery_dir : X-Plane11のCustom Sceneryフォルダーを指定します。
custom_overlay_src : X-Plane11のGlobal Scenery>X-Plane11 Global Sceneryを指定することで,デフォルトの道路や鉄道をオーバーレイオブジェクトとして使うことができるようになります。
以上を設定したら,左下の”Wright Tile Config“ボタンをまずクリックしてタイルの設定ファイルに書き込みます。
設定をデフォルトに戻したいときは”Reload App Cfg“ボタンをクリックします。
タイルの設定が終わったら,”Exit“ボタンをクリックしてウインドウを閉じます。
つぎに自分が使う基本的な設定を変更するために”OrthoXP Config”ウインドウの”Write App Config”ボタンをクリックし”Apply“をクリックします。
そうしないとOrtho4XPを再起動したときに変更内容が反映されません。
Preview / Custom zoomLevels
UIウインドウの4色タイルの上に虫眼鏡のあるアイコンをクリックすると表示されます。
拠点タイル内の複数ZLを指定するウインドウ
このウインドウは,一つのタイルの中に複雑なZLタイルを設定するときに使うウインドウです。
このウインドウを使えるのは”拠点タイル“だけです。
この機能を使ってタイルを複数作る時に,拠点タイルに指定した区域に地表があるかどうかの確認に使います。
小さな島や岬の先端が区域から外れていることがあるので,拠点タイルを変更して複数のタイルを確認するようにしましょう。
Preview params
Source : ”拠点タイル”で選んだ”Imagery”と同じものを設定するので,日本国内ならBIかGO2を選びます。
Zoomlevel : 11でも一つのタイルを上下左右にスクロールしないと見ることができません。
13を使うと雲の有無や色のおかしい区域を見分けることができますので,作成した後でも使えます。
ZoomParams : 部分的にZLを高くする範囲を細かく設定するものです。
Tiles collection and management
UIウインドウの地球のアイコンをクリックすると表示されるウインドウです。
複数のタイルを一括して作るための指定と作り上げたタイルの管理をするためのウインドウです。
地図は,ボタン2(通常は右ボタン)を押したままマウスを動かすことで表示区域を変更することができます。
複数のタイル作成と管理を行うウインドウ
拠点タイルが黄色い□で表示されているはずです。
Erace cached data
この拠点タイルにあるデータを何らかの事情で消したいとき,タイルとデータ項目を選んで”Delete“ボタンをクリックします。
Maskの修正などで利用することがありますが,タイルをDeleteするのは危険なのでやめておきましょう。
複数のタイルを消すのは,Ortho4XPのタイルフォルダーを削除するほうが安全です。
理由は作成し直すとき元のjpeg画像データは保存されているので,時間短縮できるからです。
Batch build tiles
最初にシーナリーを作る時には,ここに区分されている6つの項目すべてにチェックを入れます。
シーナリーを修正するときには,修正する項目だけにチェックを入れることで,作業時間を減らすことができます。
タイル指定の方法
一括して作る時には,”Shift”キ-+マウスのボタン1(通常は左ボタン)をクリックして複数のタイルを指定します。
指定はトグルになっていて,再度”Shift”キ-+マウスのボタン1(通常は左ボタン)をクリックすると解除されます。
また,タイルにマウスカーソルを動かし,ボタン1をダブルクリックするとそのタイルを”拠点タイル”に変更できます。
一括作成した後で,ZLを細かく変更して作り直すとき使える機能です。
“Ctrl+B1″は,何らかのアプリでタイルがCustom Sceneryフォルダー内にリンクされているときオレンジ色のタイルで表示されます。
この指定を設定したり解除する時に使いますが,私にはその有効性がわかりません。
パッチデータの入手と導入
Ortho4XPデータといえども,実際の飛行場やヘリポートの地形が正しく再現されていないことがあります。
Ortho4XPデータを作成するときにOSMデータに修正を加えるパッチデータが公開されています。
場所ごとに公開されているところは違うので,一括して導入することはできません。
ただし一旦導入しておけば,作成し直すたびに適用されるので安心できます。
日本のパッチデータとしては,Sir.Jakeさんが公開されている”X-Plane Japan Hangar”の”Custom Scenery“ページには,カスタムシーナリーと共にパッチデータがたくさん公開されています。
入手したパッチデータは,パッチの緯度経度を含んだ10度単位のフォルダーの中に収め,”Ortho4XP>Patches”フォルダー内に入れます。
画像の例は,小笠原諸島父島のヘリポート修正パッチデータを導入したところです。
USA2データで作成の+27+142タイルのMesh作成時にパッチデータが適用されています。
一括作成
作成するタイルを指定し終わったら,”Batch Build“ボタンをクリックして作成をスタートします。
スタート後には設定変更はできないので,まちがったと思ったらUIウインドウの赤い手のボタンをクリックして作業を中止します。
パラメータを設定し直してから”Batch Build“ボタンをクリックして再スタートします。
作成が始まったら,UIウインドウに進捗状況が表示されます。
初回の作成では,画像データやOSMデータをダウンロードし,メッシュを作成するため一つのタイルを作成するのにZL17で30分から1時間,ZL18なら30分から3時間かかります。
WindowsPCの電源オプションの詳細設定
夜間にPCに任せて作業させるときには,コントロールパネルでディスクの停止までの時間と電源設定を変更するのを忘れないようにします。
作業時間中にディスクを止めないように次の画面のように電源オプションを設定します。

20時間かかることはないので,これで朝まで止まることはありません
そしてPCの電源が落ちないよう,詳細設定の中で次の画面を参考に設定します。
設定を忘れていると,やり直しになるので忘れないようにしましょう。
なお一晩に作成するのは,睡眠中の7時間30分でZL17で4~6タイル,ZL18で2タイルくらいにしておきましょう。
修正ならかなり時間が短くなるので,一つのタイルで試してみてから一括作成するタイル数を決めましょう。
ダウンロードしたデータや作成途中のデータは残っていますので,中途で作成を停止してもやり直し時間は短縮できます。
作成後の処理
シーナリーの導入
Preview / Custom zoomLevelsウインドウでBatch build tilesのRefreshボタンをクリックすると出来上がったタイルが表示されます。
上の段がデータソース”Google”はGO2,”Bing”はBIと表示され,下の段がZL(17,18)です。
出来上がったシーナリーは,指定したBase Folderにあるので,各フォルダーを右クリックしてショートカットをCustom Sceneryフォルダー内に作ります。
オーバーレイデータ
オーバーレイデータは,”Ortho4XP>yOrtho4XP_Overlays“内にできています。
このフォルダーのショートカットをCustom Sceneryフォルダー内に作るか,フォルダーをCustom Sceneryフォルダー内にコピーします。
ちなみにX-Asiaを利用するのであれば,オーバーレイデータの作成は不要です。
Scenery packs.iniファイルの定義編集
X-Plane11をスタートしてメインメニューが表示されたら,いったん終了しScenery packs.iniファイルの定義内容を編集します。
必ずオーバーレイデータである”yOrtho4XP_Overlays”が各フォトシーナリーの上位になるように編集します。
以上でフォトシーナリーの作成導入手順の説明を終わります。
私の場合,最初1日の作成数に無理をしたのですが作成にZL17で7日間かかりました。
ZL18では突貫工事で約2週間かかりましたが,設定さえきちんとすれば出来上がりますので,読者の皆様におかれましては,ゆっくり作成して頂きますようおねがいします。
雲による白点の修正方法
BIベースでフォトシーナリーを作成すると,結構白い場所が現れます。
これは雲によって表示されたものですので,地表データは隠されています。
市街地の白点を消すことはかなり難しいですが,空港周辺であれば国土地理院の衛星写真データを貼り付ければ修正することができます。
大まかな白点の修正
山の中の白点を修正するには,”texture”フォルダー内のddsファイルを直接修正することにより目立たなくすることができます。
修正には,ddsファイルを直接編集できる”paint.net”が便利です。

まず白点のあるタイルを”texture”フォルダーから選び,paint.netで開きます。
つぎにツールメニューから”自動選択(T)”を選び,カーソルで雲による白点の中心をクリックします。
すると,雲の大まかな範囲が自動的に選択されます。
選択できたら,周囲の画像の色をスポイトツールでプライマリーカラーパレットにセットします。
つぎに塗りつぶしツールで選択範囲をクリックすれば,塗りつぶし完了です。
上手く範囲選択できない場合は,ペイントブラシで適当な範囲を塗りつぶすことになります。
塗りつぶしが終わったら,ddsファイルを上書き保存します。
オプション設定ウインドウが開くので,ミップマップの生成にチェックが入っていることを確認し,OKをクリックすれば修正終了です。
この方法で行った荒っぽい修正でも,木々で地表が隠されほとんど目立ちませんので安心してください。
GoogleやBIのデータを利用しているOrtho4XPデータは,利用規約により公開できないことをお断りしておきます。